もうすっかり秋だね、冬もすぐ来るんだろうね。と、一緒にエレベーターに乗った会社の先輩が言った。

エレベーターが目的の階に着くまでの沈黙を埋めるためのただの世間話だったが、それからなんとなく冬のことについて考えている。

冬は好きだ。単純に暑いより寒い方が耐えられるというのもあるけど、自分が好きな記憶や思い出のほとんどが冬だからだと思う。

その好きな記憶のうちの一つ、高校生の頃に大雪が降った日があった。確か曜日は土日のどちらかで暇していて、交通網が麻痺して人手不足になっていた地元の飲食店のバイト先にヘルプに向かった。

本当に雪がすごかったので周りの店は営業していなくて、その分たくさんお客さんが来た。この雪でよく営業してるねとも言われた。その日はヘトヘトになって店を出た。

帰り道、普段なら少し賑やかな道が驚くほどしんとしていた。雪で真っ白になった歩道とキーンとした空気が心地良かった。不思議とそんなに寒くはなくて、誰もいなくて、ワクワクして好きな曲を聴きながら帰った。

あの時の空気をまた感じたくて、今年の冬は雪降ってほしいなと思っている。